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18
February 2020

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日本のダイヤモンド業界の状況:2020年の動向と課題

人口1億2000万人の島国・日本は、ダイヤモンドの近年の消費量が最も多い国の一つです。実際2000年代前半には、世界のダイヤモンド需要の20%が日本でに占められていました。ダイヤモンドの婚約指輪を贈る慣習が従来の日本文化にはないことを踏まえれば、これは驚くべき数字です。ダイヤモンドを婚姻の象徴とする西洋の概念がデビアスのマーケティング活動の一環として日本にもたらされたのは、1950年代後半だったのですから。

それ以降、日本のダイヤモンド市場は、景気変動、社会規範の変化、消費性向の変化などあらゆる要素に影響を受けてきました。では、2020年代に突入する今中、日本国内の宝飾・ダイヤモンド業界はどのような動向や課題に直面しているのでしょうか。以下ではその一部を解説しています。

高級感に対する独自の美学

最近都内に国内9番目となる店舗をオープンさせたばかりのハリー・ウィンストンのCEOは、「日本は世界有数の高級市場の一つ」と話します。日本人の宝飾品の好みには、伝統的な工芸技術と、現代の最新技術を活かしたデザインの両方が反映されています。

さらに、ダイヤモンドに関しては、非常に高い品質、極めて高い精度水準、見た目の美しさが鍵となります。Sarineでは、平均0.3ポイントのVVSクラスのダイヤモンドが特に好まれる傾向が見られます。日本の消費者は、大きいだけのダイヤモンドではなく、真の高級感を反映する高品質の小さなダイヤモンドを常に好む傾向にあります。

ダイヤモンド関連技術の利用状況

日本の消費者はテクノロジーに強く、テクノロジーをいち早く利用する傾向にあります。ダイヤモンド業界でも同様に、より便利で透明かつ信頼できるテクノロジーベースのダイヤモンド購入システムへの需要を反映し、日本ではSarineのデジタルダイヤモンドトレーサビリティレポートがいち早く浸透しています。

とはいえ、ダイヤモンド関連テクノロジーが日本人に歓迎されたのは、これが初めてのことではありません。日本のブライダルジュエリーブランドNew Art(エクセルコ)は、2013年にライトパフォーマンス(輝き)のグレーディングレポート、2019年に原石から宝石までの軌跡を示すダイヤモンドジャーニー™レポートを導入するなど、Sarineの最新ダイヤモンド技術を用いた店舗体験の向上に、他社に先駆け取り組んでこられました。

消費者支出の停滞を乗り切る経済政策

2019年10月、日本政府は消費税を8%から10%に引き上げ、5年ぶりとなる増税を実施しました。そのため、増税前の9月には、駆け込み需要により家計支出が急増したため、増税後に再び支出が落ち込みました。政府は、予想される支出の停滞に備えるため、需要減の埋め合わせに役立つ様々な施策を整備しました。これらには、小規模な小売店での電化製品購入時に5%を払い戻す制度などが含まれ、これにはデジタル取引を全国レベルで推進することで、キャッシュレス社会の実現を促す目的もありました。

 小売支出が10%近くに落ち込む中、政府は2019年末、約26兆円相当の大規模な経済刺激策を導入し、後退する景気の回復に取り組みました。こうした施策の実施を受け、日銀は2020年の幕開けを前に、成長予測を上方修正しました。こうした背景は、ダイヤモンド・宝飾小売市場の幸先を裏付けています。

高級品消費が伸びる可能性

日本は1980年年代半ばに「バブル景気」に沸き、経済が繁栄し支出が増加しました。

この時期に日本の消費者により購入された高品質で高価なダイヤモンドや宝石の多くが、40年間タンスの肥やしとなったあと、現在次々と現金化されています。そのため日本には現在、そうした高級宝飾品を求める海外の宝石商が多数訪れ、その大半がこうした宝石商により買い取られています。事実、日本のダイヤモンドオークションに参加する業者の40%が、海外トレーダーに占められています。

 こうした「バブルの遺産」現象は、80年代と比較した高級品消費機運の停滞というより幅広い動向に付随するものです。世界の他の地域同様、日本でも若者による高級品離れが進み、旅行などのその他の特定分野のブームが拡大しています。2018年の日本人海外旅行者数は、1900万人近くを記録しました。

こうした時代にブランド製品の消費を伸ばすには、新しい価値観に合うデジタル戦略を小売店で展開することで、高級感や品質に関する日本人独自の美学にアピールする必要があります。

婚姻率や出生率の低下

日本国内の婚姻率は、2019年現在6年連続で低下し続けています。1990年代には20人に1人だった結婚歴がない未婚女性の割合は、現在は7人に1人にまで増加しています。これにより、独身生活や独身者、特に独身女性の需要に応える新たな小売産業が誕生しました。

一方、結婚に向け準備をする人々の間では、行事ごとに合わせた宝飾品の購入が一般化しています。結婚指輪を買うのはもはや当たり前で、新婚夫婦は皆、結婚指輪を購入します。一方、ダイヤモンドの婚約指輪を購入する婚約中のカップルの割合は60%にとどまっているため、この顧客セグメントに関しては、大きな成長の余地が存在します。ライトパフォーマンス(輝き)のグレーディングやインタラクティブデジタルレポートなどのテクノロジーを活かした店頭ショッピング体験に対しては、特に若者から好意的な反応が示されています。

事実、テクノロジーの導入は、日本のダイヤモンド小売業界の主要な消費者動向となっており、新世代の売り手による準備も整っています。

2020年代は、日本の宝飾品業界が一変

2020年代には、業界を一変させる世代交代が起こると見られています。日本国内の宝飾店の多くは、事業を子どもに継がせる準備を進めています。これらの若い世代の経営者は、教養や判断力があり、テクノロジーに非常に敏感な人々です。また、テクノロジー主体の世の中で育った最初の世代でもあります。そのため、デジタルモバイル技術が顧客体験の向上や、顧客とブランドや宝飾品とのつながりの強化にどう役立つか、理解できる知識を持っています。また、彼ら自身がデジタルネイティブな消費者でもあります。これらの新世代の経営者こそ、今後10年間にわたる日本国内でのダイヤモンド宝飾業界に革命的変化をもたらす人々なのです。

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